ST/デジタル証券って、今どんな感じ?(ファクトまとめ)
こんにちは、プログラマブルな信頼を共創したい、Progmat(プログマ)の齊藤です。
第2回記事で「なんでトークン化するの?」を解説してからは、毎週「ステーブルコイン(SC)」編として解説してきました。
https://note.com/embed/notes/n810efe3f421b
第7回目の本記事から何回かにわたり(※)、
「セキュリティートークン(ST)/デジタル証券」編として解説します。
※プレスリリース等のイベント週では【速攻解説】編をお届けします
「ST/デジタル証券」編の初回にあたる今回は、
実際どんな感じの市場になってきたか、マクロな概観をファクトデータベースで俯瞰したいと思います。
目次
- 結論
- 既に、1,300億円市場
- アセットバック型STのAUMとは
- 市場の牽引役は、圧倒的に不動産ST
- 不動産ST拡大の歴史とポイント
- “不動産以外”のアクティブなSTは2件
- ST業界構造と進化の方向性
- 最後に…
結論
結論からいうと、こんな感じです☟
- 2023年11月13日時点で、既に1,300億円規模であること
- アクティブ案件は不動産STが21件、不動産以外が2件であること
- ST関係者は多岐にわたること
- なかでも当面は【ODX】(STセカンダリ集中取引市場)と【Progmat Coin】(SC発行管理基盤)の2点の動向が、市場インフラとしての進化の方向性であること
既に、1,300億円市場
順番にいきましょう。
まずはいつからどんな感じで伸びてきたかの概観について、こちらの図表をご覧ください。
対象とする”ST/デジタル証券”は、金融商品取引法(金商法)上の有価証券(電子記録移転有価証券表示権利等)です。
有価証券には、公募と私募の概念がありますが、
情報が広く公開されている公募案件のみとしています。
有価証券の種類はさまざまですが、公募のST/デジタル証券として実績があるのは、次の2種類です。
- アセットバック型ST
- 社債ST(デジタル社債)
市場規模の対象としている数字は、いずれも「残高」です。発行後、償還(終了)前の元本金額をカウントし、償還(終了)するとゼロになります。
各時点でアクティブな案件の金額のみ、ということです。
アセットバック型STの「残高」は、いわゆるAUM(運用資産残高)です。
アセットバック型STのAUMとは
アセットバック型STは、ざっくりいうと、
- 不動産や動産、金銭債権などのアセットを、
- 証券発行のための法的な器(特別目的事業体、Special Purpose Vehicle、SPV)に入れて、
- SPVに入れたアセットを裏付けにした証券(アセットバック証券)に関する権利を、
- 「電子情報処理組織(いわゆるブロックチェーン等の法的な言い方)」に表象して発行します。
1番〜3番までは、いわゆる”証券化”と同じです。
4番を「紙」で実施していれば「券面発行有価証券」、
4番を「ほふり(証券保管振替機構)の振替口座簿」で実施していれば「振替有価証券」、
4番を「電子情報処理組織(ブロックチェーン等)」で実施していれば「ST/デジタル証券」、
というイメージです。
(厳密な議論は、別途スキーム解説編で…)
アセットバック型STを発行体(SPV)を、
“アセットバック型STファンド”と呼ぶと、
このファンドは既存の証券化ファンドと同じく、いわゆるレバレッジをかけることがあります。
レバレッジをかけるとは、端的にいえばファンドにおいて一部ローンを調達することです。
なぜローンを調達して”レバレッジ(テコの原理)”をかけるかというと、
利回りを高めるため、です。
イメージはこんな感じです☟
(様々な要素を省いてシンプルにしています)
- 100億円の不動産を、ファンドに入れて証券化したい。(=100億円の調達が必要)
- この不動産の利回りは、5%。
- つまり、毎年5億円の不動産収益を生む。(100億円×5%)
- 全て証券の形で調達すると、この証券の利回りは、5%。(不動産収益5億円=配当5億円÷証券元本100億円)
- 全額を証券にするのではなく、半分の50億円をローンで調達し、残額を証券にする。
- このローンの返済利子は、2%。
- つまり、毎年1億円の利子を返済する。(ローン元本50億円×2%)
- 50億円をローンで調達した場合の配当可能額は、毎年4億円。(不動産収益5億円-ローン返済1億円=配当可能額4億円)
- この場合の証券の利回りは、8%。(配当4億円÷証券元本50億円)
- つまり、ローンを50%にすると、利回りが+3%。
というわけで、
一部のアセットバック型STファンドでは、
既存の証券化ファンドと同様に、一定のローンが入っています。
つまり、アセットバック型STファンドのAUMとは、
ファンドの運用残高
=裏付資産金額
=証券化(ST)元本+ローン元本
です。
市場の牽引役は、圧倒的に不動産ST
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